2016/04/08
成年後見制度利用促進法の理念の実現を
本年(2016 年)4月8日、第 190 回通常国会の衆議院本会議において、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(成年後見制度利用促進法)が成立しました。この法律は、日本成年後見法学会が5年以上にわたって成立を働きかけてきたものであり、その成立の報に接して感慨深いものがあります。成年後見制度利用促進法の出発点は、2010 年10 月に横浜で開催された第 1 回成年後見法世界会議において、世界に向けて発せられた「横浜宣言」にあります。2000 年 4 月にスタートしたわが国の成年後見制度は、10 年を経過した 2010 年には、すでに抜本的な見直しを要する事態に立ち至っていました。その解決策を提案したのが「横浜宣言」でした。「横浜宣言」は、成年後見法分野における最初の国際的な宣言として、世界的にも高く評価されています。その「横浜宣言」の理念を実現しようとするものが、この成年後見制度利用促進法なのです。
成年後見制度利用促進法は、既存の成年後見制度の利用をやみくもに促進させようとするものではありません。成年後見制度を本来の理念に沿うように根本的に改めたうえで、その利用促進を図ろうとするものです。本来の理念とは、ノーマライゼーション、自己決定権の尊重、身上保護の重視です。既存の制度を改めることなくそのままにして利用促進だけを目指しているとの批判も一部に聞こえますが、それは成年後見制度利用促進法の考え方とはまったく相容れないものです。
成年後見制度利用促進法が成立した今、成年後見法をいかに改め、その適正な運用をいかに支援していくかが問われています。従来の発想にとらわれることなく、国連障害者権利条約や「横浜宣言」に立脚した成年後見法の改正を希求し、さらには後見制度の担い手を支える公的支援システムを構築することが不可欠です。また、今回成立した「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」についても、実効性のあることが望まれます。
これらのことはすでに成年後見制度利用促進法の中に盛り込まれています。今後成年後見制度利用促進法の枠内においてこれらが実現されることになりますが、その実現は決して容易ではありません。なぜなら、成年後見法に関しては異なる見解が並存しており、それらを統一することは困難を極めることが予想され、また新しい施策を実現するための予算の捻出も相当の困難を伴うことが予想されるからです。
内閣府に設置される有識者による成年後見制度利用促進委員会が、さまざまな困難を克服して、成年後見制度利用促進法の理念を確実に実現するための建議等を行い、それを受けて政府が必要な措置を講ずることを期待します。日本成年後見法学会は、そのために必要な支援・協力を惜しまないことを表明いたします。
成年後見制度利用促進法の成立はゴールではなく、スタートであるにすぎません。超高齢社会において、人々の役に立つ成年後見法というゴールを目指して、2016 年4月8日、私たちは新しいスタートラインに立ったのです。国民の英知を結集した議論がなされ、成年後見制度利用促進法の考え方に則した画期的な結論が導かれることを期待します。
2016 年4月8日
日本成年後見法学会理事長 新井 誠
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日本成年後見法学会理事長声明